コンコルド効果

住んでいるのは小さなマンションだけど、わしは一応自分専用の自室を持っている。
その自室は、自慢じゃないがモノで溢れ返っている。ほんのわずかな空間でもあれば、そこに何かが押し込まれている。
ま、言い換えれば、“全室完全ゴミ部屋” である。
カミさんさえ足を踏み入れない。用がある時でも、ドアの敷居から足を半歩入れただけで、用を伝える。
とにかく人に見せられたものではない。
ところが去年、首の骨を折って1ヵ月あまり入院した際、必要があってカミさんのケアマネージャーに入られた。ハレのゴミ景色をぜんぶ見られちゃった。以後、なんとなく彼女の顔をまっすぐに見づらい。
ナニによってそんなに溢れているのかといえば、ご多分に漏れず、本と、何かの役に立つ(と勝手に思っている)イロイロな資料と、わしの趣味に関するサマザマな機械類だ。
が、今となってみれば、その99%はまさにゴミそのものと化している。
役に立たないどころか、何らかの意味のあるものさえナニもない。
そのうえ日常なにかと不便である。
にもかかわらずやはりご多分に漏れず捨てられない。
その理由を考えていて、ある言葉を思い出した。
コンコルド効果。
コンコルドというのは、古い人間なら聞き覚えのある人もいると思うが、世界初の “超音速ジェット旅客機” の名前である。
イギリスとフランスが共同開発した。もともと「コンコルド」というのは「協調・協和」という意味のフランス語である。(「Concorde」。英語は「concord)
この “英仏協調機” は、空の貴婦人と呼ばれて、一時は世界の大人気モノだった。
ところが実はとんだ見かけ倒しだった。
ものすごく開発費用がかかったのに、燃費は悪いわ、もの凄くうるさいわ、維持費が膨大にかかるわの三重苦。おまけに、飛び立つのに長い滑走路まで必要とする。
いるよね、人間にも、そういうヤッカイな人・・・。一見高級紳士(貴婦人)風で見かけはいいんだけど、根性は悪いし、自分のやることはいい加減なのに他人の悪口ばっかり言うし、金遣いはやたら荒いし、要するに付き合いが超大変な人。
コンコルドの話にもどるが、今さら受注をキャンセルしたら、膨大なキャンセル料が発生するので、赤字なのに製造をやめられない。
その上、間違った意識が働いた。
これまで費やした時間とかかった費用の、元をとろうとしたのである。
そのうち黒字になるだろうという根拠のない予測のもとに、作り続けた。作れば作るほど赤字が膨らむのに・・・。
結果、受注キャンセル料を払うより何倍もの損失を積み上げ、結局墜落した。
そういう「元をとろうとして引っ込みのつかなくなる状況」を指して、“コンコルド効果” というのだそうな。
わしのゴミ部屋も、超小っちゃいけど、それに似たようなものだと思う。それは解かっている。
解かっているのにやめられない。
それはわしが人間であるからデアル。
人類が永遠に戦争をやめられないように、やめられない。
・・・なんて、逃げのテまで用意しているところが、タチが悪い。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。