冷や水のお通り禁止
上に掲載した写真は、数年まえ、家の近所を散歩していたとき拾ったスナップである。
今回はチラ見ではなく、少々時間をかけてご覧いただきたい。
写真だとちょっとわかりにくいが、パリダカを完走した車輌をもってしても、ここの通行はちょっとムリ・・・いや絶対にムリ、といった土手状の急斜面である。
そこにこの看板が掲げられていた。
不退転の気迫を放ちながら毅然と・・・。
「車好きのなかには愛車を駆って、この土手を上ろうとする男でもいるのかねえ」
と、ジョークのつもりで隣にいたカミさんに言うと、
「今の日本に、そんな気概のある男はいません」
と冷笑された。
むろん亭主への当てこすりなのだが、まあ、言っていることに間違いはない。
「しかしね、だとするとこの看板が設置された意図が、いよいよナゾに思えてこないか?」
と言ってみたが、これにはご回答はなかった。
だがわしはなんとなく気になっていた。
ところがそれから数ヶ月後、再びこの場所を通りかかって、あッそうか、と気づいた。
この土手を、子供たちが上り下りしながら、いかにも楽しそうに遊んでいたからである。
つまり、子供らが楽しげに遊ぶ姿を見て、老人が妙な気を起こしてはいけない。年寄りが年にそぐわないことをするのは怪我のもとだから、やめなさい、という、昔からニッポンに伝わる先人の智恵(年寄りの冷や水)を、「車輌」という暗喩に託して警鐘を鳴らし、注意を喚起しているのでは・・・と気づいたのだ。
ただ、それなら、「車輌通行止」の「車輌」は、「ポンコツ車輌」としたほうがよりいいのでは・・・なんてことをわざわざここに記すのは、もちろん、なんの意味もないアソビであることは充分に承知ております、ハイ。
失礼いたしました。
(現在この看板は撤去されいる。どころか土手そのもがコツゼンと消えてしまった。その跡地にはいま学習塾ができている。世の変化はめまぐるしく、もはや老兵の出る幕じゃない、早く消えろ、ってことですな)