兄の中にひそんでいた伏兵

レントゲン写真

 人間はめんどくさい。
 ↑ これ、わしの口グセ。
 「めんどくさい」をたびたび口にするようになったら、その人間は老化している証拠である・・・とその方面の専門家がテレビで言っていた。

 そのとき自らを顧みて大いにうなずくところがあったので、(5月24日に書いたように)わしは深く反省して二度と口にしない決心をしたのだが・・・気づいてみると、その後も性懲りもなく「めんどくさい」を連発している。
 情けない。
 
 でもそれには理由がある。
 どう考えてもやっぱり人間ってヤツはめんどくさいからだ。全身にめんどくさいモノを詰めこんで、めんどくさく生きている、めんどくさい動物だ。
 ・・・などと、ヒマにまかせて鼻毛を抜きながら嘆いていると、前後の脈絡なく数十年前のあるコトが頭によみがえった。
 
 そのころ、たまたまわしはあるすばらしい本に出会った。少なくとも当時のわしにはすばらしい本に思えた。その本に出合えたことで、自分の人生が大きく変わるとさえ思った(実際に変わったかどうかはまた別の話デス)。

 だがその本は一般にはほとんど知られていなかった。まだ若かったわしは、できるだけ多くの人にその本を紹介したいと思った。きっとわしと同じように感動するだろうと信じて・・・。
 
 そのようにしてその本を贈った人のなかに、次兄がいた。

 彼は身内が言うのも何だが、かなりレベルの高い男だった。アクは強いが、すべてに細かく神経が行き届くし、好奇心も気骨もあるうえ、必要な努力を厭わない性格だった。それが彼を中学生にして予科練に向かわせ、特攻隊に志願させて、終戦があと1週間遅れていたら爆弾を抱えて飛び立っていた・・・という人生を歩かせた。

 死の1ミリ手前から帰ってきたものの、それからの数年、日本は菓子器の中のサクランボの茎みたいな混乱期だった。
 彼は大学へ進学する機会を逸した。

 かろうじて専門学校を出て放射線技師となった彼は、人の何倍も努力して、新しいレントゲン撮影技術を編み出したり、学会で研究発表をしたり、X線フィルムの全国コンテストで優勝したりした。彼の勤める病院近辺の医大教授が教えを乞いにくると、鼻をふくらませていた時期もあった。
 そういった前向きの男だったから、わしは例の本を贈ったのである。絶対に喜んでくれると思って・・・。
 
 ところが結果は逆だった。それを機に明らかにわしに対する態度が変わった。冷たくなった。場合によってはこちらが話しかけても無視するほどだった。その変化はまちがいなく、紹介の手紙とともにくだんの本を送ってからである。

 わしはわけが分からず悩んだものだ。

 だがその後、あることから理由が分かった。
 表に出すことはなかったが、次兄には学歴コンプレックスがあったのである。前述したように彼は大学に行けなかったが、わしは曲がりなりにも大学を出ている。
 その大学出の弟が、「この本はいい本だ。参考にしたらいい」と上から目線で書物を送ってきた。それがカンに触ったらしい。

 もちろんわしには「上から目線」の気持ちなどミジンもなかった。単純に「兄のような生き方をしている人間にはぴったりの本だ」と思っただけだ。
 
 兄はわしと違って、自分の進んだ道で人並み以上の仕事をしたし、そこで得たノウハウを他にも応用して、収入もわしの何倍も得ていた。それでいて学歴などというどうでもいいコトに過敏に反応した。
 
 そうと分かったときわしは、人間ってのはめんどくさいな、と強く思った。
 その思いは年をともに減ずるどころか、近年ますます強くなっている。
 
 つまり専門家が説く老化が進んでいるわけである。
 語るに落ちたわけだ。

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