評判の映画『ドライブ・マイ・カー』を観た

ドライブマイカー

 前回、映画に関する話を書いたので、ついでにもう1回映画の話。
 
 映画に係わる仕事をしていたこともあって、若いころはよく映画を観た。毎日めしを食うように観た。時には食当たりを起こすほどに・・・。
 
 ところがあるときからとつぜん映画館へ行かなくなった。
 映画の仕事から離れたせいもあるけれど、テレビでタダで観られるようになったことが大きかったと思う。根はケチだからネ、あっしは。
 
 というわけで、かれこれ40年ほども映画館のスクリーンから遠ざかっていたのだが、ここにきてどういうわけか突然、2本も続けてスクリーン上で映画を観た。何もしないのに向こうからそういう機会がやってきたのである。トコトコ歩いてくるように・・・。

 1本が前回の当ブログに書いた『THE LAST BUS』、もう1本が今回取り上げる『ドライブ・マイ・カー』である。共に昨年、2021年制作の作品。
 
 この映画の前評判はソートーに高かった。世界の名のある映画祭でいくつもの賞を取っていたからである。たとえば、
 
 ・カンヌ国際映画祭第74回 脚本賞
 ・NY批評家協会賞第87回 作品賞
 ・ゴールデン・グローブ賞第79回 外国映画賞
 ・LA批評家協会賞第47回 作品賞/脚本賞
 ・アカデミー賞第94回 国際長編映画賞

 ネットの上を歩いてみても、この映画をベタぼめしているホームページやユーチューブも多い。

 そういう映画だったから、たまたま低料金で見られる機会がやってきたので、ヨロヨロしている足をガンバッテ運んだわけだ。
 
 だが正直いってがっかりした。
 人生に真面目に向き合おうとする映画ではあるけれど、リアリティの薄い底の浅い作品であるようにわしには思えた。
 
 この映画を観ていない人には、話を具体的に展開しても通じないので避けるけれど、とにかく、まじめに人間や人生に向き合おうとする創作姿勢や、映画制作への情熱は感じるけれど、残念ながら映画に特有の、映画でしか表現できない魅力や面白さに欠ける映画だった。ありていに言えば、そういう方面への才能・資質はあまり無さそうな人の作ったつまらない映画だった。
 
 老人であることの数少ないメリットは、ともあれ人生の経験を多くしていることだ。
 そして経験は何よりも強い。頭のなかで作り上げた”作りモノ”は、どんな小さなものでも経験者には分かる。口幅ったい言い方になるけれど、”嘘っぱち” が透けて見える。
 
 この映画が3時間もの長尺をついやして表現しているものは、制作者たち(脚本家や特に監督)が頭のなかで作り上げた “拵えモノ” ものである。
 つまりリアリティが感じられない。
 作者が言いたいのはコレコレなんだろうな・・・という理屈は、肉の付かないあばら骨のように感じられるけれど、そんなものを口の中へ押し込まれても、犬じゃないんだから楽しめるわけがない。
 
 映画作者もさまざまである。
 それぞれ好みや趣向が違い、技術の上手い下手もあって、まあいろいろなのが存在していい。世の中にはノッポもチビもデブもいるように・・・。
 だがわしが何となく落ち着かないのは、先に述べた、世界に名高い映画祭の審査委員たちである。
 
 彼らの立場は、映画に関するプロ中のプロであるはずだ。
 少なくとも彼らは、その一年に発表された世界中の映画の中からか、優れた上位を選び出す役割を背負っている。世界中の映画好きが注目しているなかで・・・。
 
 そんな彼らが、この程度の作品を高く評価するのが、わしには解せない。
 こんなのに賞を与えて顕彰していると、映画嫌いを増やすのではないかと心配する。その結果、ラチもないアクション/ホラー/SF映画、さらにはSFX・VFXに凝ってだけの底の浅い子供っぽい映画にますます観客を追いやる。

 だいたい名高い映画祭に入賞する映画は、観念的にすぎてあんがい面白くないケースは意外に多い。
 ふだんから思うことだが、そもそもその手の映画祭の審査委員たちは、いわゆる “頭でっかち” が多いように思う。
 
 おいおい、エラそうに言っているけど、そう思うのはお前さんの頭が “からっぱち(空っ鉢)” だからではないのか・・・という声が聞こえてきそうだ。
 
 もちろん、底の浅いのは当方の頭の方である、という可能性は否定しない。好みが違うせいもあるだろう。

 しかしわしが感想を言うとすると、当方所有の頭から取り出して言う以外にない。人の頭を借りて言ってもしょうがなかろう。
 
 今回の記事はそのことを前提に読んでもらいたい。
 当たり前のことだけどサ。
 

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