令和6年のわが家の風景
よく知られているが、認知症はいったん発症すると元には戻らない。
対応の仕方によって多少進行を緩やかにすることはできるらしいが、進行そのものは止められない。
うちのカミさんの場合も、まさにそのセオリー通りの状態を示している。
老化が年を取ることと足並みをそろえて進むように、さながらよちよち歩きの幼児の双生児が、お手々をつないで歩いているかのように、老化と認知症が手を取り合って日々進んでいる。ほほえましい光景だ・・・とは言えないけどね。
今や短期の記憶力は完全に喪失した。
数秒前に言ったこと、したことが、まったく頭から消えて無くなる。
で、いろんなところで問題が生じる。
昨日も、台所で毎日使っているキッチン鋏が、コツゼンと姿を消した。
ないと困るので探しまわるが出てこない。
カミさんは知らないと言い張る。最近触ったこともないと言う。
もちろん数秒ですべてを忘れるのだから、そう言うのは当たり前で、わしもいちいち逆らわないが、問題はあくまでそう言い張ることだ。
当人の頭の中からは完全に消えているのだから、それも解るのだが、繰り返されるとついムカッとくる。声が大きくなる。
要するにわしの人間ができていない。
自己嫌悪が追いかけてくる。
あまり楽しくない。
そんなカミさんが、先日、ひとりで買い物に行くと言いだした。
わしが風邪にやられて寝込んだときだ。
買い置きの食材が種切れになって困ったとき、自分ひとりで買いに行く、大丈夫だと言ってきかない。
おのれが認知症で、どのていどの人間力になっているかも記憶から落ちているので(つまり自覚がないから)、買い物くらいひとりでできると思うらしい。
食べる物がないという状況はとにかく困るので、試しに行かせてみるかという気にふとなった。
最近彼女は、頭への刺激がどんどん少なくなっている。たまには強力なヤツを与えるのも悪くないのでは・・・とも思った。
スーパーまでの細かい地図を描き、買う食材の名前もいちいち書き込んだ。
自宅の住所と名前も記した。
困ったら電話できるように、出かける前にスマホの電話の掛け方もリハーサルした。
時間はかかったが、無事に帰ってきた。
自分で思っていた以上に疲れたらしく、げっそりとした顔付きをしていたが、とにかく家に戻ってきた。電話も掛けてこなかった。
わしも、ともあれやりとげたのだからリッパなもんだ、と見直す思いで迎えた。
が、実態は、やはりそれほどリッパではなかった。
買ってきた食材がムチャクチャだった。
メモに書いておいたモノとは関係なく、買って欲しかったものがなく、不必要なものモノをやたら買い込んでいた。
メモの紙を渡しておいたことも、忘れていたらしい。
しかしまあ、実際の役には立たなかったけれど、無事に帰ってきたのだからそれを評価すべきかもしれない・・・と思い直した。
悪くすると途中で自分の居場所が判らなくなり、迷子になる可能性もなくはなかった。
実はわしはそれをひそかに恐れていた。
ちゃんと無事に帰ってこられた。
その事実を、わしはありがたい贈り物でも貰ったように抱きしめている。
・・・というようなのが、2024年終りのわが家の現状でアリマス。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。
ご苦労様です。
私の家内もパーキンソン病を病み、10年以上になります。バランス感覚が衰え、昨年は転倒し二度も骨折入院をし、長期のリハビり入院をしました。これ以上骨折するのは困りますので、週に二度骨密度を上げる注射をしています。高価ですが、効果はある様で骨密度は上がってきましたので、今後は転倒しても骨折は避けられそうです。
元々、幻聴や幻視がありましたが、入院以降酷くなった様に思われます。出来るだけ話を聞いてあげようと思うのですが、度重なるとつい声を荒げてしまう事があり、家内の寂しそうな顔を見て、「アー又やっちゃった。」と反省する事が多くなりました。
パーキンソン病はやがて認知症になる方が多いと聞いていますので、出来るだけ脳に刺激があればと、マンション内で行われる奥様方のお茶会に連れて行ったり(男は少ないので私は居心地が悪いのですが)、日常の買い物にも一緒に出掛けています。足元がおぼつかないので、車で出かけ、後は車椅子と杖を使い分け苦労しております。
色呆け爺さんも女房に関しては私以上に大変そうですねぇ。
パーキンソン病はかつて永六輔も罹病していて、その体でテレビに出て病状を語っているのを見たことがあります。
とても大変そうでした。
今回のコメントは、奥さんに対する心やりやご努力がひしひしと感じられて、自分のことのように身が引き締まりした。
とにかく年を取るといろいろと問題が増え、苦労も多くなります。
多かれ少なかれ誰でも通る道筋なのでしょうから、我慢して対する以外にありません。
ま、お互いガンバリましょう。(半ボケ爺)