ツンデレ・センサーライト
最近、暗闇の中でも動くものをセンサーでキャッチして、玄関や庭に照明灯を点灯する家がふえた。
わしが毎夕ジョギングする道筋にも、そういう家が何軒かある。
その中の一つが、わしはどうも気になってしかたがない。
その家の前の道幅は狭い。その道を通る生きものは、すべて門柱に設置されたセンサーに捕まえられて、ひどく明るい照明にてらされる。人間はもちろん犬や猫も。ナメクジやカタツムリはムリだろうけど。
いちど試しに門柱からいちばん遠いところを通ってみたが、センサーの逮捕から逃れられなかった。
しかし、断りもなくいきなり照明を当てられるというのは、あまり気分のいいものではない。パパラッチにフラッシュを焚かれる有名人の気持ちが分かる。
だが、生きものは “慣れる” という防衛装置を持っている。毎日そこを通るたびに光を当てられていれば、慣れてきてそれが当たり前になる。だんだん気にならなくなる。
ところがわしは冒頭である家のセンサーが気になってしかたがないと書いた。慣れないのだ。それには理由がある。
その家の自動照明灯(センサーライト)が、日によって反応が違うからである。わし同様古びてあちこちにガタがきているのだろう、時によって点(つ)いたり点かなかったりする。点くときでも、その点き方にバリエーションがある、というオマケまでつく。
いつものコースをジョギングしていて、その家が近づいてくると、わしは何となく落ち着かなくなる。センサーライトはきょうは点くだろうか、点かないだろうか、ということが気になり始めるのだ。点いても点かなくてもそんなことはどうでもいいんだけど、でも、気になっちゃうんだな。
たとえばある日は、センサーの感知範囲内に入っても点かないので、「ああ、きょうは点かない日なんだ」と思っていると、数秒後、背後でパッと点いたりする。
その翌日、センサー内に入っても点かないので、「どうせ遅れて点くんだろ」と思っていると、そのまま点かずじまいになり、背中へアカンベーをされた気分になる。
もちろんHNKテレビの正午の時報のみたいに、くそっまじめにつく日もある。
とにかく若い女どうよう、気まぐれというか、気分屋というか、自分勝手なのだ。
そんなふうに、頼まれもしないのによその家の門灯に勝手に振り回されてイライラしてるんだから、何やってんだか分からない。
「あんた、年いくつ? アホとちゃう?」
と毎回、自分で自分にツッコミを入れるのだけれど、翌日また同じことをやっている。
しかも、そんなことをわざわざここに書いてるんだから、わしもソートーヒマ人だ。それを読んだあんたも。
※補記
「ツンデレ」とはどういう意味か、わしは最近まで知らなかった。
「人間関係において、過度に敵対的な態度(→ツンツン)と過度に好意的な態度(→デレデレ)の、二つの性質をあわせ持つ様子」と「Wikipedia」にあった。
それで初めて、よく聞く「ツンデレ女」は男の気をひく、というコトの意味がわかった。「ツンデレ・ライト」でさえ爺さんの気をひくのだから。