英雄メッシの悲劇

英雄メッシ

 いま、サッカーW杯で世界中が盛り上がっている。
 日本も6月19日のコロンビア戦で勝利してから、国中が熱狂している。わしも、にわかサポーターとなって興奮している。
 が、それとは別に、妙に心にひっかかる選手がいる。
 サッカー強豪国の一つアルゼンチンの、リオネル・メッシである。

 日本時間6月16日に、アルゼンチンの第1戦が行われた。

 相手国はアイスランド。北極圏のすぐ南に位置する総人口33.7万(東京の中野区1区とほぼ同じ)の小国である。これまで1度もW杯に出たことはない。注目されるスター選手もいない。ハツカネズミがシロクマを相手に戦うようなものだ。
 ところが結果は「1-1」の引き分けに終わった。

 この試合でメッシは、得点の最大チャンスだったPK(ペナルティーキック)に失敗した。
 アイスランド相手のPKなど、彼にとってはハツカネズミの首根っこをつまんで捕虫網の中へポイと放り込むようなものだったはずだ。

 テレビはこのPKシーンをくり返し放映した。
 わしはシュートを外したあとのメッシに目をひかれた。
 そのときのメッシをどう表現すればいいだろう。
 懐に手を入れてみたら、全財産を入れた財布を掏られていることに気づいた男。

 そのあと彼は、何かに追われるように必死の形相でやみくもにゴールに突っ込み続けた。だがその姿はちょっと見ていられなかった。

 試合終了を告げる笛が鳴ったとき、メッシは左腕のキャプテンマークを剥ぎ取るように外し、その手を膝において深く腰を折った。うつむいた彼の顔は暗く、まるで背中に100トンの石を背負っているかのようだった。

 わしには、そんな彼の姿が絶望しているように見えた。
 英雄英雄ともてはやなしがら、実は自らの気晴らしのために、無責任に他人の背に巨大な石を背負わせている自国の人間たちに対して・・・。

 さまざまな分析がマスメディアに出た。その中でわしの目を引いたのは次のような記事である。

・4年前のブラジルW杯で準優勝したときサベラ監督は言った。「チームにとって一番重要なのは、メッシに居心地良くプレーさせることだ」
・現アルゼンチン監督のサンパオリは言った。「チームは私のものではなく、メッシのものだ」
・ついこのあいだ出版されたばかり同監督の著書には、こんなくだりがある。
「アルゼンチンはメッシの頭にW杯という銃を突きつけている。優勝できなければ、彼の体はハチの巣になるだろう」

 以上はきのう(6月21日)の夜に書いた。
 今は、6月22日の午前6時だ。3時間前の午前3時から、アルゼンチンの第2戦(対クロアチア)が行われて、1時間ちょっと前に終了しているはずだ。

 ネットの速報にアクセスしてみた。
 わしの予感は当たっていた。アルゼンチンはクロアチアにも「0-3」で負けていた。
 ニュースの見出しは「メッシまたも不発。強豪アルゼンチン完敗。グループリーグ陥落か!」だった。

 

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