カワセミの愛

カワセミ(翡翠)

「飛翔する宝石」って知ってます?

 スズメほどでの大きさの小鳥だけど、目のさめるような鮮やかな羽をしているためにそう呼ばれる。海、川、湖、池などに生息するので「水辺の宝石」ともいわれる。・・・といえばお分かりだろう、翡翠(カワセミ)である

 このカワセミをすぐ目の前・・・わずか2メートルほど先に見たのは、30年ほど前、この地に引っ越してきて間もなくだった。
 新しい住まい近辺の様子をすこしでも知っておこうと、天気のよい午後に家をでて、足のむくまま歩いていたら、川にぶつかった。

 大きな川ではない。むしろつつましやかな小さい川だ。
 あとで知ったのだけれど、もともとは生活排水を流すどぶ川に近いものだったらしいが、バブル時代に思いかけず懐が温かくなった市が、川幅の拡張と護岸をかねた改修をおこない、両岸の遊歩道も新たに手を加えて瀟洒なものにした。

 財源がだぶついたからといって、使用目的もはっきりしない巨大な上物を作らなかっただけでもエライ。市はいい仕事をした。

 ・・・などとわしがめずらしくほめるのは、この川岸の遊歩道を、いまも毎日利用させてもらっているからである。つまりわしのジョギングは、コースの3分の1ほどをこのK川に沿った遊歩道を走る。ホメなきゃ悪いでしょ。

 話をもどす。
 引っ越してきた当時のK川は、改修してまだ数年しか経っていなかったこともあって、アンツーカーを敷いた遊歩道の路面や、路肩の草花の色どりがきれいで、気持ちのよい川筋をつくっていた。

 その遊歩道をしばらく歩いていると、近くでチリチリ、チッチーチッチーというような聞きなれない鳴き声がした。
 歩道と川のさかいにある鉄柵の上から身をのりだして覗いてみると、水辺に生えている灌木の中にきれいな羽をした小鳥がいた。写真で見ていたので、それがカワセミであることに気づいたが、こんなにまぢかで見たのは初めてだった。声も初めて聞いた。

 かつてカワセミの鳴き声を、自転車のブレーキ音に喩えた文章を読んだことがあるけれど、ブレーキ音はかわいそうだ。そんなにつよく鋭くはない。その小さな体にふさわしくかぼそい声だった(少なくともわしが聞いたのは・・・)。

 これものちに市の広報誌で知ったのだが、このK川は改修後、水がきれいになってカワセミが棲むようになった。いまや生息地として知る人ぞ知る存在になっているらしい。いわれてみればジョギングのとき、時おり首に高級カメラをぶら下げた熟年男性にちょくちょく出会うし、鉄柵からのり出すようにしてシャッターを切っている人も見かける。

 そんなこんなで、カワセミはわしにとって比較的親しい小鳥だが、つい先日某新聞のコラムで、生物学者の福岡伸一さんがこんなことを書いているのに出会った。

「(カワセミは)求愛の時期になると、オスはメスにプレゼントをわたす。何度も水に飛び込んではようやく捕らえた魚を、まず枝や地面にたたきつけて動きをとめる。それから魚をくわえなおし、頭側をメスへ、尻尾を自分の側に向けて差し出す。ヒレやトゲがメスの喉に引っかからないようこまやかな配慮をしているのだ。」

 それでわしは思い出した。小学校の3,4年生の頃だったと思う。工作の時間に、クラスメートからわしの近くにあったハサミを取ってくれるように言われ、わしは何げなく取って渡した。
 するとそれを見ていた女の先生が、刃物をひとに渡すときは、刃先は自分の側にし、相手には取っ手のほうが向くようにして渡しなさい、と注意された。わしは無自覚にその逆をやっていたのだ。

 そのときはああそうなんだと思っただけだったが、のちになってこのときのことを思い出すと、ちょっと恥ずかしい思いがした。自分が・・・というより親を恥ずかしく思った。ちゃんとした親なら、小学3,4年ころまでにはこれくらいのことは子に教えておくべきだと思ったからだ。

 それにしても・・・と改めて思う。
 あの小さな生きものが、脳だって人間にくらべればはるかに小さいだろうに、他者への行為にあのようなおくゆかしい気遣いをするなんて、なんと素敵なことかと。感動的ですらある。

 いったい誰が教えるのだろう。
 親鳥が成長過程で教えるのだろうか。それとも本能として生まれつき持っているのだろうか。
 どちらにしても、自然の手は奥深く細やかで美しい、と翡翠の生態にあらためて思ったことだった。

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