「七転び八起き」老人版

だるま

 若い時は考えもしなかったが、こう体のバランスが悪くなると、日常生活にいろいろと不都合が生じる。

 70歳を過ぎたあたりから特につよく感じはじめたのだが、かつてのようにバランスがうまく取れなくなった。

 たとえばふつうの生活をしていても、必要があって脚立にのぼらねばならない時がある。
 かつては脚立のてっぺんに立ち上がって、天袋のモノを取り出したり、天井ちかくの電球を付け替えたりする作業はたいして難しい仕事ではなかった。が、70を過ぎるとそれができなくなった。
 上るのはてっぺんから一段下までにして、作業をするときは脚立の上部を両脚で挟んで、それを支えにそろそろと体をのばし立ちあがる。おっかなびっくり手をのばしてそれで届かなければお手上げ。諦めるしかない。

 脚立の上で立ちあがるのは、まあ高いところで地球の引力に逆らう行為だから・・・ということもあるかもしれんが、勾配のない平地をただ歩くだけでも、バランスが悪いと問題が生じる。まっすぐ歩けないのだ。まっすぐ歩いているつもりでも曲がっちゃう。体のバランスがうまくとれないのが原因だ。

 これに白内障かなんかで視力も弱っていたりすると、狭い歩道では向こうからくる人とぶつかってしまう。
 相手が若い人なら、「何だ、このじいさん、昼間っから酔っぱらってるのか」と思いながらもよけてくれるから大事に至らないが、相手もじいさんやばあさんだったら接触事故を起こしかねない。相手もバランスが悪いからちょっと触れただけで倒れる。それで脚の骨でも折ったりすれば、寝たきりになる可能性だってなくはない。

 こういう、どこから見ても美しくない老人型ボディ・コミュニケーション事故だけは避けたい。
 ・・・と思っていたら、あるときテレビで、「体のバランスを良くする運動」というのを放送した。新聞のテレビ欄に◎を付けて視聴した。運動神経抜悪のじいさんにも簡単にできるところが気に入った。
 今回はこの運動を紹介する。

 まずどのくらいバランス感覚が衰えているかテストする。
(1)床の上に立ち、気をつけの姿勢をとる。
(2)続いて、片方の足をもう一方の足の前に出し、かかとを後ろの足のつま先につけて、両足を一直線に並べる。
(3)そして、目を閉じたらテストはスタート。

 これを「継ぎ足立ちテスト」というらしいが、この姿勢のまま30秒キープできれば、平衡感覚はしっかり保たれている、と言っていいそうだ。
 しかし、すぐ足がふらついてバタバタするようでは、バランス感覚が失われている証し。日常生活において転倒の危険性が高い。

 実際にこのテストをやってみた。お察しのとおりわしは3秒しか持たなかった。30秒を100点とすればわずか10点だ。とても親には見せられた成績ではなく、ランドセルから出さない点数だ。

 だが、ご安心あれ、ご同輩。
 わしみたいなふらつき老人でも、簡単にバランス感覚を回復できる運動・・・というか訓練方法があるという。これがまた拍子抜けするほど簡単なのが良い。

(1)まず柱やドアの枠など、床から垂直に伸びた線が見えるところに立つ。
(2)その垂直線を視野に入れながら、頭を傾け、15秒間キープする。
 (左右それぞれ15秒ずつ、一日朝晩2回行う。てるてる坊主でもやれそうなくらい簡

 なぜ垂直線を見ながらやるかというと、人間は、内耳にある耳石器という器官が体の傾きを感知して、その情報を脳へ送り、同時に目から入ってくる傾きの視覚情報も受けとって、その二つを合わせて脳が処理するらしい。これがバランスを保つメカニズムだそうだ。(早い話、さっきのテストでも、目をつむってやるより目を開けてやるほうがはるかに易しい)
 このトレーニングをくり返し行うと、加齢で衰えた脳につながる神経を刺激する→平行感覚が改善するという。

 くだんのテレビ放送でも、一般視聴者を被験者にして実験をやっていた。
 訓練前に行った継ぎ足立ちテストでは、ふらつき度がわしとほとんど変わらなかった60代の主婦が、2週間ほど上記の「15秒頭傾け」運動をやったあとでは、驚くほどの結果を出していた。

 以後わしは、朝の運動の最後に、この「15秒頭傾け」運動を付け足してやっている。なにしろ路上等でうっかり転んだら「寝たきり」どころか、打ちどころが悪いと「あの世へ直行」ということもありうるので、バランス感覚の重要性をおおいに自覚するからだ。

「七転び八起き」って言葉がある。あっちこっちでやたら聞くが、あれは若者・・・せいぜい中年くらいまでに向けたものだ。わしらのようなもんには「一転び不起き」が実態に合ってる。イチコロビフオキ。これ、「七転び八起き」の年寄り版

 1回転んだら終わり・・・ってのもなにやら切ないが、考えようによってはこれって、「ピンピンコロリ」の一形態とも言える

 ピンピンコロリは、世界中の老人が心の奥底でいちばん望んでいるものだ。
 それが1回転んだだけで手にはいるなんて、ありがたい話ではないか!

 ・・・とはいっても「コロリ」とはいかず、「ピンピングニャリ」とかになって下半身不随・・・みたいなことにならないとも限らない。

 ま、要するに、人生は思うようにはいかないって話だ。

 ・・・ということもあるからしてわしは、「15秒頭傾け運動」のような、知らない人がみれば「あのひと頭おかしいんじゃないの?」って言われそうなことも、毎日やってるわけである。

 年寄りはつらいよ。

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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