夫婦の相性

離婚

 前回、相性について・・・とりわけややこしい “夫婦の相性” について書いたが、充分ではなかったので、補充的にもう少し書いてみようと思う。

 夫婦の相性というと、誰でもまず “性格が合う合わない” ということを思い浮かべると思う。

 場合によっては、性格が違うから却ってうまくいく、というケースもないわけではないけれど、違うためにイライラしたり、ムカッとする場合のほうが圧倒的に多いと思う。そして無用な夫婦ゲンカを生み出す。
 
 よくあるのが、キレイ好き派か、キタナイの気にならない派か、がある。

 その親類筋の、周辺が整理整頓されていないと落ち着かない派と、放置乱雑でも平気の平左・・・というのもちょいちょいケンカの素になる。

 「脱いだら脱いだ所に放りっぱなしにしておかないで、せめてひとっ所にまとめておいてよ!」
 なんてカミさんに怒鳴られている図は、むかしテレビのホームドラマでよく見た。
 わしは脱いだ衣服を脱いだ所に飾っておく趣味はないけど、日用雑具を一定場所に整理整頓して仕舞っておく、ということがなかなかできない。
 
 どっかへ一緒に出掛けるときに、一方がせっかちで他方がのんびり屋・・・なんてのでよくあるイサコザは、
「いつまで待たせるんだ、夜になっちまうぞ!」
 などとトゲのある嫌味を言うぐらいで、まあ仔猫のじゃれあいみたいなもんだけど、子供の教育・・・学校の成績が急に落ちたとか、最近悪い友だちと遊んでいるらしい・・・というようなときに、一方が心配屋で他方がのんびり屋だと、深刻な夫婦ゲンカに発展する可能性がある。
 
 食べ物の好き嫌いとなると、かなりキツイ喧嘩になる。
 生まれた地方とか育った家庭の影響で、味つけが違うと、ケンカもかなり深刻になる。
「こんな辛い味噌汁が飲めるか!」
 くらいで済めばいいが、
「こんなマズイものは食えない!」
 といって食卓を立つとか、
「俺を高血圧にして殺すつもりか!」
 などという言葉を吐くようになったら、かなり深いミゾができてる。

 あまり表に出ないが、存外メンドーな相性問題がある。
 金銭感覚の違いである。金に関する感覚のずれ。
 一方が金にルーズで他方が几帳面だと、生活にストレートに影響する問題だけにしんどい。
「こんなモノにそんな大金をつぎ込んでどうするのッ! わたしが毎日の食材の買い出しに、一円でも安く買おうとして、どんなに神経使っているか知らないのッ!」
「あのねぇ、この際はっきり言っとくけど、おまえには無価値かもしれんが、おれには命の次に大事なんだ。これがあるからストレスから解放できて、なんとか会社の仕事が続けていられるんだ!」
「えーッ、信じられない!」
「分かってくれないようじゃ、もう一緒にやっていけないな」
 なんて、けっこう深刻になる。
 
 性格の違いというより、これは体質の違いかもしれないが、性への好みの違いはけっこう重い。この問題は外に出にくいけれど、大きな結果を生む。表向きは性格の不一致と称する離婚の原因は、実は性の不一致である場合が多いと言われる。ま、厄介なハナシだ。
 
 ・・・という風に、大したことじゃないように見えて、夫婦の相性は人生を左右しかねないメンド臭い問題であると思う。
 
 わしのところは先月で結婚56年になったから、波風はあったけど、まあそれほど悪い相性ではなかったように思う。
 が、まあ、それだって単に運がよかっただけだけどね。
 
 結局、人間はウン次第か・・・。

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