残り香にゆすぶられて -高齢者の性- (3)

高齢者の性交頻度

 前回(-高齢者の性-2)に取り上げたのは、高齢男性のケースだった。今回は女性も含めて、いくつかの調査で報告されたデータを少し見てみようと思う。(前回はこちらから)

 前回で取り上げたNHKの番組「クローズアップ現代+」でも、女性高齢者の性に関する声として、
「夫が週1回かならず求めてくるのが苦痛。でも他人には相談できない」
「夫が・・・というより日本の男性は、セックスを続けることが男として優れていると思っているような気がします。性に関する意識の違いが私には苦痛でなりません」
 といったことばが紹介されていた。

 たしかに日本では一般的に、女性は高齢になると性欲が減退して性的な興味がなくなる・・・と思われている傾向があるように思う。現に、当「高齢者の性」シリーズの第1回目の記事に、女性から同様のコメントが寄せられている。

 しかしここにこんな調査がある。高齢者の性交頻度をしらべた、いわゆる「大工原調査」といわれるものだ。
 大工原秀子さん(1932~1992)は保健婦出身で、東京都中野区の老人福祉センター保健指導主査も務めた高齢者の性に関する研究のパイオニアだ。
 大工原氏は1973年と1985年の2回、70歳前後の男女の性交頻度を調べて、比較した。1回目と2回目を隔てる歳月はわずか12年だが、想像をこえる大きな変化が女性に見られた。
 
 まず当記事冒頭に出した図表を見ていただきたい。1973年の調査で「性の営み」があると答えた女性は、頻度が年数回のものを含めても調査対象の44%にしかすぎなかった。ところが12年後の調査では93%になっている。しかも月1回以上が56%と、半数を超えているのだ。
 時代の変化とともに、いろいろな側面で、性に対する個人の意識も社会の意識も大きく変わっている過程を窺わせる。

 とはいえたしかに女性は、閉経後は女性ホルモンの減少により性交痛が生じることもあり、性交を避けたがるのは生理的な事実としてあるだろう。そのうえ、具体的な相手となる夫に愛情を感じなければ・・・というか人間として嫌悪しか感じないとなれば、性欲も減退するのは自然にちがいない。

 だが性欲自体がなくなるわけではない、と専門家は言う。京都大学名誉教授の性科学者/脳生理学者である大島清氏は、著書『女の科学』のなかで次のように述べている。

「70歳を過ぎたお婆さんでも性的刺激を受けると膣に分泌液を産出する。『老年期の性』の著者の大工原秀子が老人ホームで濡れるか濡れないかのアンケートをとったところ、率は少ないが濡れるという答えが結構あったという。
 老年に達すると膣壁は卵巣ホルモンが不足しているため薄くなってかさかさの状態になるが、性的欲望は十分にある。子宮が萎縮してしまうと頚管粘液は出ないが、副腎からの女性ホルモンで膣にも周期反応が残る。
 従って女性は継続的にセックスを続けていれば死ぬまで女でいられる。閉経後は妊娠という重荷から解放されて、性欲は強まることはあっても弱まる理由はない」
 前々回の記事で触れた大岡越前守の母の話を、さながら現代医学が裏付けたような文章である。もちろん大島清氏とは異なる説をとなえる学者もいるだろうが。

 先に述べた大工原秀子氏は、1979年に60歳以上の男性172名、女性60名を対象に「性行為のある割合」を調査して、次のように報告している。
    男 60~64歳 76%
      65~69歳 88%
      70~74歳 76%
      75~79歳 78%
      80歳以上  46%
    女 60~64歳 55%
      65~69歳 56%
      70~74歳 30%
      75~79歳 12%
      80歳以上  38%
  (※性交回数は男女共に週二回から年一回までを含める)
             (出典:森省二著『逸脱するエロス』)

 また、日本性科学会が配偶者のいる40~70代の男女1000人を対象に、1999年10月~2000年3月にかけて行った調査データから、高齢者と呼ばれ始める層 65~69歳 を抜き出したものを次に示す。
 
    【男性】
    週2回以上=   2%
    週1回=     7%
    月2~3回=  18%
    月1回=    12%
    年数回=    27%
    この1年なし= 35%
    
    【女性】
    週2回以上=   0%
    週1回=     8%
    月2~3回=    20%
    月1回=     8%
    年数回=    23%
    この1年なし=   43%
    
 この調査は配偶者との性交に限定したもので、いわゆる「婚外交渉」は反映されていない。パートナーとの豊かな(年齢を考えれば…)性生活をエンジョイしている高齢者も少ないことを思わせる。
 実際、この調査の最高年齢層である75~79歳では、男性の11%、女性の17%が「月2~3回性交する」と回答しているのだ。
 もし対象に婚外者もふくめれば、(現在はこの調査からさらに20年近く経っていることを思うと)この数字はどんなことになっているのだろうと、わしなどちょっと震えがきそうだ。

 ちなみにこれらの調査データに対するわしの感想をいえば、65~69歳の男性のうち、週2回以上性交をする人が2%もいるのに驚く。
 さらに、週1回行うひとが男性7%女性8%、月2~3回のひとが男性18%女性20%もいるのを見て、同年齢のころの自分を顧みて、自信を失いそうになる。
 
 統計というのは、設問のしかたによって、あるいは集められたデータの処理のしかたによって、結果が違ってくると言われる。
 したがってこうした調査を過信するのは危険だが、高齢者の性の一端を示すことは事実なので、あえて取り上げてみた。
 
 次回最終回は、この問題に関するわし自身の考えを中心に書いてみようと思う。

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残り香にゆすぶられて -高齢者の性- (3)” に対して 2 件のコメントがあります

  1. むらさき より:

    男と女の性交渉の頻度の違いが気になる!
    どーゆーこと?
    ありえん!

    1. Hanboke-jiji より:

      男と女の性交渉の頻度の違い・・・ねぇ。
      コトの背後にあるものがあまりにも複雑深淵でありすぎて、
      あっしにもわかりません。

      まあ、ひとつ言えることは、当記事の最後のほうでも触れて
      いますように、「調査/統計」というものが、数学や物理学みたいに
      実態を確実正確に表すものではない・・・ということがありますかねえ。

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