あと3ヵ月で百歳になる母が・・・(1)

脳梗塞

 くり返しこのブログにも登場してもらっているが、義母(女房の母親)はあと3ヵ月ほどで百歳になる。という年齢なのに、これまで頑固に独り住まいを続けてきた。自立心と負けん気と娘への思いが手をつないで・・・。

 数日前の朝の9時半過ぎだった。
 義母が週に2回通っているデイサービスから電話が入った。
 きょうは通所の日なのに、連絡もなく姿を見せない・・・と。
 あわてて住まいへ電話を入れると、応答がない。何度くり返しても、むなしく呼び出し音が鳴りひびくだけだ。
 
 いよいよ来るべきものが来た、と直感して、現地の119番に出動を要請した。

 義母が住んでいる住居は鉄筋コンクリートのマンションである。外から室内に入るには鍵が要る。その合鍵を持っているのはこの世にわしたち夫婦だけだ。だがすぐに向かっても、着くまでにほぼ2時間はかかる。
 場合によってはベランダからガラス戸を壊して入ることになるが・・・と119番に言われ、事情が事情なので了承した。
 
 残念ながら予感が当たった。義母はキッチンの流しの近くで倒れていた。
 脳梗塞だった。
 
 近頃はよく知られているが、脳梗塞には血栓を溶かす特効薬がある。この薬を静脈内に投与すれば劇的に回復する。後遺症も残らない。ただしそれは発作の発生後4時間半以内・・・という制約がある。
 
 おそらくその問題があるからだろう、病院に着いたとき、倒れたのはいつ頃かと医師に訊ねられた。女房が、前日の夕方である可能性が高いと答えた。

 すると医師は自分で訊ねておきながら、ふしぎそうな顔をして訊きかえした。
「そばに誰もいなかったはずなのに、どうしてそんなことが言えるのか」
 当然である。こんな話を鵜呑みにするような医者だったら、少なくともわしの主治医には御免こうむりたい。
 
 女房は医師に答えた。
 じつは母の朝食はいつもパン食である。トーストと目玉焼きと野菜サラダにミルクティー。それが何十年にもわたる母の朝食の習慣だ。
 ところが発見されたときの食卓の上には、ふだんは夕食のときに食べるごはん物の料理が、食べかけのまま残されていた。
 おそらく前日の夕食時に、気分が悪くなるかどうかして流しへ立った。そして倒れた、と考えるのが自然ではないか・・・と。

「なるほど。ミス・マープルみたいですね」
 と医者は言って笑った。ちなみにミス・マープルとは、(推理小説好きなら知らぬ者はいないと思うが)アガサ・クリスティの小説に登場する名探偵老嬢の名前である。”老嬢” 探偵を挙げたところなど芸が細かい。 

 わしはそのとき感じた。
 患者側には愛する人の生き死にの問題であっても、医者にとっては何十人何百人とかかわる仕事相手のひとりにすぎない。だから冗談のひとつも言って笑える。
 
 ・・・といって、わしはこの医者を非難してるわけではない。
 人は立場によって思うことが違う。
 人間世界のどこにでもある一場面である。
 
 余談だが、救急隊はガラス戸はもちろん、どこも壊さずに2階のマンションへ入ったという。推理小説なら密室殺人状況だ。
 
 タネあかしををすればこうである。
 救急隊員がベランダに来てみると、やはりガラス戸には鍵がかかっていた。
 ただ、ベランダに設置したBSテレビ用のアンナ線が、天窓を通して室内へ引いてあることを見つけ、ここは鍵がかかっていないと判断したという。

 あの小さな天窓を通り抜けたこともふくめて、さすがプロである。

 義母の主治医もプロであることを願う。
 それしかわしにはできないのが情けない。

 (この老母のその後の経過は、随時このブログで報告しマス)

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