人間はこうでなくちゃ

人間こうでなくちゃ 限りなく屍に近い “腐敗途上人間”。

 そんな人間になるのだけはさすがにゴメン蒙りたいので、毎朝ベランダに出て体操と瞑想をやっている・・・という話を前回に書いた。
 今日はそのベランダで目撃したとある光景である。
                       (前回はこちら
 
 ・・・というわけで毎朝ベランダに出ていると、ある光景を目にすることになった。
 
 前にも書いているが、わが家の前は通り1本へだてて幼稚園である。
 敷地の周辺は高い塀(へい)で囲まれているけど、隣に建っているわが家はマンションの2階なので、ベランダから園の裏側半分がまる見えだ。
 
 まる見えといっても、物理的に見えない所は見えないヨ。恋愛部屋とか女子トイレの中とかは・・・。高い塀に遮蔽されてるか否かにかかわらずネ。悪いけど。

 バカ言ってないでさっさと先へ進め!
 へい、ガッテン。
 
 で、わがベランダから見えるのは、奥に幼稚園本体の建物、その手前に大小の遊具が設置されている運動場、運動場横手の塀沿いに物置小屋、その小屋の前に園児送迎用のマイクロバス・・・って感じの光景が俯瞰できる。
 
 前回に書いたように、わしは起床すると小1時間ほどベランダに出ている。
 頭上にせり出している上の階のベランダが屋根がわりになって、雨が降っても濡れない。強風に吹き込まれたら別だけど。(何のために小1時間もベランダにいるのかについては前回を参照されたし→こちら) 

 さて、毎朝6時15分になると、時報のようにバイクの音が聞こえる。
 幼稚園の従業員の1人がやってくるのだ。年齢は60代前半くらい。

 毎日ピタリ同じ時間に来る・・・という感じなので、ためしに2,3日、精確な時計をベランダに持ち出してチェックしてみたら(ヒマだね)、誤差は1分以内だった。前職は新幹線の運転手だったんちゃう?
 
 この60男(仮にAさんと呼ぶとしよう)は、几帳面なロボットのように毎日やることがキッチリ同じだ。
 
 6時15分にバイクでやってきて、裏門の大きな金属製アコーディオン門扉を両手で押して開け、園内に入り、物置小屋のシャッターを押し上げる。乗ってきたバイクを中に入れ、出てくるときはバケツやモッブや水道のホースリールを手にもって出てくる。
 
 ホースリールの元栓を小屋脇にある水道の蛇口につなぎ、ホースをバスの所まで伸ばしていって、バスに水を掛けはじめる。彼は園児送迎バスの運転手なのだ。

 左手に持った散水ノズルで水を掛けながら、右手に持ったモッブでバスの横っ腹や窓などを撫でたりさすったりする。もちろん汚れを落としているのだ。サイドミラーなど細かい凹凸のあるところなどは、モッブを手放し雑巾を使う。
 
 バスはマイクロバスだけど大型で、全体を洗うのにはけっこう時間がかかる。労力もいる。

 朝の6時台なので、園の他の職員はまだひとりも来ていない。
 たまに塀の外を犬をつれて散歩するひとが通るが、もちろんその人からも連れの犬からも見えない。つまりAさんの働きぶりを見ている者はだれもいない。
 
 にもかかわらず、Aさんは一切手を抜かない。どの部分も疎かにしないで、丁寧に丁寧に洗っていく。愛情をこめて磨き上げると言っていいかもしれない。
 
 その様子を見ていると、品性下劣なわしなど、好きな女を真ごころ込めて愛撫しているように見える。
 特に車輪まわりの外から見えない部分へ、雑巾をもった手を差し入れて丹念に洗っているときなど・・・。
 こうなると、最後まで彼の働きぶりを “見学” せずにおれなくなる。

 さて、彼のパートナーともいうべき園児送迎バスを磨き上げると、次はバケツと雑巾だけ持って遊具めぐりを始める。
 
 すべり台、ブランコ、うんてい、鉄棒、スプリング遊具、スイング遊具などすべての遊具の、園児たちの手や衣服が触れるところを雑巾で拭いてまわる。何度も雑巾をバケツですすぎながら、ここでも手を抜かず、丁寧に丁寧に・・・。

 この雑巾がけもけっこう時間がかかるが、それが終わると洗浄道具を物置小屋にしまい、さて一服でもするのかと思いきや、すぐまた小屋から出てきて、こんどは運動場をねめ回しはじめる。右手にステッキのような棒、左手にビニール袋をさげて、地面を睨みつけながら隅から隅まで・・・。

 最初は何をしているのかと思ったが、まもなく分かった。彼は園児たちが走り回る運動場の地面に、なにか危険なものが落ちていないかチェックしているのである。

 じっさい子どもたちは、金切り声をあげて走り回りながら、激しくこけたり転んだりする。危険なモノが地面に落ちていれば、大怪我になる可能性がある。
 
 Aさんはグラウンドの土の部分はもちろん、塀ぎわに生えている雑草のなかも、丁寧にチェックする。そのときなぜ右手に棒を持っているかが分かる。棒の先で草の根を分けるのだ。
 そして時おり腰を折って、何かを拾ってビニール袋の中に入れる。
 
 何度もいうようだが、Aさんの仕事ぶりをを見ている者は誰もいない。
 ”腐敗防止のため” ベランダに出ていたわしが見たのは、偶然だ。
 
 先に書いたように、Aさんの本来の仕事は園児送迎バスのドライバーなのだろう。
 バスの清掃や管理は仕事のうちかもしれないが、遊具の雑巾がけやグラウンドの危険物の除去は、彼が自発的にやっているような気がする。
 
 世の中にはこうした名もなき庶民がいる。
 そういうひとの姿に目がふれると、なんとなくまぶしいような・・・というか忸怩とした気分にさせられる。
 
「なんとなく」と書いたが、ホントいうと理由ははっきりしている。
 自分は彼のようにちゃんと生きていないからだ。

 語るに落ちるたァこういうことだねぇ。

 

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