鬼も内

 先日の節分の日の新聞の読者欄に、こんな投稿があった。
「節分が終わると、家の外は鬼でいっぱいだね。だってどの家でも『鬼は外!』と言って豆まきをするから・・・」
 孫がそうつぶやくのを聞いて、なるほどと感心したという投書。
 
 子供の柔らかい目で見ると、そういうところにも視線がいくのかと、わしもちょっとフイを突かれる思いがした。

 住宅地の各家の外では、豆を投げつけられて追い出された虎皮フンドシの赤鬼や青鬼が、あっちやこっちの電柱のかげで金棒をかかえながら寒さに震えている光景が目に浮かんだ。鬼が身につけているのはフンドシだけだからさぞかし寒いだろうなァ、と同情心さえ湧いた。
 
 しかしそれは子供心の延長にある想像心が一瞬動いただけだ。すぐにおとなの連想が働いた。
 鬼が家から追い出されるのは、人間に悪さをするからだ。
 今でいうならさしずめコロナだな・・・と。
 
 しかしいま日本人がやっているのは、「コロナは外」と叫んで、コロナに感染した人だけでなく、感染した人を助けるために働いている医療従事者やその家族にさえ、豆を投げつけている。
 
 何という自分中心の、浅ましい行為だろう、と眉をひそめる人は、自分が今ひとまず安全な場所にいる人だろう。
 人間はだれでも・・・いや生きものはすべて、自分の身に危険が及べば逃げる。あるいは反撃する。人のことを考える前に・・・。それは生きものの宿命だ。
 
 それを考えると、生きものが生きるというのはきびしく哀しいものだ。
 
 そんな気落ちする気持ちにポッと小さな灯をつけてくれたのは、やはり節分の日の新聞に載っていた小さな記事だ。
 地方によっては、「福は内」とは言っても、「鬼は外」とは言わない所があるという。
 ・・・だけではない。兵庫県のある地方では、「福は内、鬼も内」と言って豆まきをするそうだ。
 
 「鬼も内」ねぇ。なんてやさしい・・・。 
 
 ・・・とうれしくなって調べてみると、「鬼も内」と言う地方は、かつてその土地を治めていた藩主の家名が「九鬼」なので、藩主への配慮からそう言うようになったらしい。
 
 やっぱりねぇ。小さな会社で社長に睨まれたら困るもんねぇ。
 

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