命がけで恋人に会いに行く

命がけの恋

 命がけで何かをする。

・・・なんてことは、わしのように年をとればとるほど無くなる。

 ましてや「命をかけて恋人に会いに行く」なんてことは、鎌倉の大仏さんが夜中にこっそり奈良の大仏さんに会いに行くことがないように、ない。

 だからこそ、たまたま観た『ロミオとジュリエット』というテレビ・ドキュメンタリー番組に感動したのだろう。
 
 南米大陸の北西部にコロンビアという国がある。
 そのコロンビアの熱帯雨林に、モウドクフキヤガエルという小さな蛙が生息しているらしい。
 
 大きさは5~6センチ、体の色は黄色や橙色、大きな黒い目をしているので可愛らしい印象だが、その名の示すとおり猛毒を持っている。なんと1匹で10人の人間を殺せてしまうほどだとか。

 コロンビアの先住民は、この蛙から抽出した毒を吹き矢の先に塗って狩猟をする。モウドクフキヤガエルという名はそこからきているらしい。
 別名「テリビリス(terribilis)」ともいうようだが、これは英語でいえば「terrible」で、「怖い、恐ろしい」という意味だ。

 これといって外敵と闘う武器をもたず、逃げ足も早くない小動物が生き残るために獲得した自衛手段だろう。

 この世の生きものはすべて、生き延びるためにこうした何らかの工夫をしている。コロナ禍中における小さな飲食業界を連想する。
 
 さて、毒の話をしておいてこう言うのは気がひけるが、このドキュメンタリー番組(BS日テレ 2021.1.17放送)の主題はじつは猛毒ではない。モチーフは『ロミオとジュリエット』という作品のタイトルが示すように、「恋」である。
 
 繁殖期がくると、モウドクフキヤガエルの雌は、恋のパートナーを求めて苦難の旅に出る。
 繁殖期には期限があり、その期限が過ぎるまでに相手を見つけなければ、己の遺伝子を残せない。
 
 なにしろ体長5センチの小動物である。その体で南米大陸の熱帯雨林の中にパートナーを見つけなくてはならない。雄の鳴き声だけを頼りに・・・。

 狭い面積に人口が密集している東京でさえ、婚活が成果をあげる(相手を見つける)のは難しいのだ。体の小ささに比して密林の大きさ広さを考えれば、思っただけで気が遠くなる。
 
 番組のカメラは、そんな一匹のモウドクフキヤガエルの雌を追う。
 西遊記の三蔵法師さながらの旅をして、次から次へと立ち現れる困難を乗り越えながら、パートナーの雄とめぐり合い、交尾してぶじ卵を産むまでを丹念に追っかける。
 
 たとえば急流に足をとられて流される。必死に足掻いて助かろうとするが、水の勢いは強く、激闘のすえ命からがら向こう岸に這い上がるが、長い距離を流されてしまって、頼りの雄の鳴き声は聞こえなくなっている。
 またあてもなく、雄の声を求めて密林の中を歩きまわらなければならない。
 
 行く手の枯れ葉の中に、いやらしい色をしたヘビが潜んでいることもある。モウドクフキヤガエルの猛毒さえ無化できる能力を備えたヘビだ。
 このヘビはこのヘビなりに生き残るための努力工夫をして、特別の能力を獲得しているのである。
 そのヘビに捕まったらフキヤガエルは一巻の終わり。命も遺伝子も消える。
 
 また、そのへんの岩とほとんど同じ姿に擬態した爬虫類がいて、待ち伏せしている。そいつの舌の射程圏内に入ると、電光石火のごとくくり出される長い舌にからめ取られて、やはり命も遺伝子も終わる。
 
 上空からは猛禽類も狙っている。油断するとたちまち黒い影が蔽いかぶさり、その大きな爪にさらわれる。
 
 こうして出会うさまざまな外敵と必死に渡り合いながら、その牙から逃れて生き延び、ようやくパートナーと出会っても、相手に拒否されて交尾に至らないこともある(これは人間にもあるが)。
 その場合にはまた新たな相手を探さす旅に出なければならない。
 
 こうしたこの小動物の姿を見ると、つくづく思わずにいられない。
 生きものが生きるというのは、なんと過酷なものであろうかと。
 こんな小さな一匹のカエルでさえ、生きる途上でこれほどの苦難の連続を強いられるのだ。

 神はいったい何を思って、何の目的で、あるいはいかなる理由があって、人間も含めたこうした生きものをこの世に創りだ出すのだろうか。
 
 ・・・なんてね。ヒマなんデス、老人は。
 

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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