クレジットカードを不正使用された(下)

Amazon Prime

 アマゾンのプライム会員になったことがないのに、クレジットカードのわしの口座に、アマゾンからプライム会費の請求がきた。

 冷蔵庫に入れてあった虎屋の羊羹を、食べてもいないのに食べたといって母親に叱られた子どもの頃と同じ気分だ。トーテー承服できない。
 で、苦労してアマゾンに電話を入れたところまでを前回に書いた。(前回はこちら→「上」「中」
 
 ようやく電話がつながると、まず最初に当方の身元をうるさく訊かれた。
 名前、住所、生年月日、アカウントID、パスワード、鼻の穴の直径、頭の禿げ面積率・・・最後の2つはもちろん冗談だけど、身元確認がうるさいのは分かる。現にいまわしが直面しているように、身を偽って悪いことするヤカラがネットでは多いからだ。
 
 で、身元が確認されると、核心のトラブルの内容を訊かれた。
 訳のわからん会費の請求がきている、どういう訳か、と尋ねた。
 話を受けたのはカスタマーサービスの女性係員だったが、「お調べしますので少しお待ちください」といって、不正請求された日時を確かめてから引っ込んだ。受話器からは、店員が店先で手もみするようなメロディーが流れだす。
 
 けっこう長い時間手もみメロディーを聞かされた。
 電話は向こうから掛けてきているので、電話代を気にしてイライラすることはなかったが、ジリジリはした。
(まだかいな・・・早よせんかいな・・・何してんのや・・・そんなに面倒な話なんか?・・・どっちにしろ待たすのはええ加減にせーや!)
 人間、うまくいかない局面にぶつかると、氏素性が現われマスな。
 
 ようやく電話口に戻ってきた係員は言った。
「お調べしましたところ、たしかに弊社からお客様のクレジットカードに、プライム会費の支払い請求をさせていただいております」
「させていただいていますって、さっきも話したように、私はプライム会員になったことはないんですよ」
「お客様ではなく、お客様とは別の方がプライム会員にお入りになっていて、その会費の支払いに、お客様のクレジットカード・アカウントが使用されております」
「えッ、なに、それ? ・・・私の知らない誰かが、知らない間に、私のクレジットカードを使っているってことですか?」
「まあそういうことになります。使われたのは今までのところ、弊社ではプライム会員費だけですけど・・・」
「誰ですか、それは?」
「・・・・」
「その人の名前は何というんですか?」
「それは個人情報になりますので、言えません」
「そんな・・・その人は明らかに不正を働いてるですよ」
「その可能性はありますが・・・プライバシー保護の問題もありますので・・・」
「名前と電話番号だけでも教えてよ。私自身でその人に直接連絡をとって、どういうことなのか訊いてみるから」
「申し訳ございません。どのような理由でも、弊社の利用者の登録情報を外部に洩らすことはできません」
 わしは思わずフン然となった。
「・・・ってことは、アマゾンでは被害者より加害者のほうを擁護するわけ?」
「そんなことはありません」と言ってから少し間をおいて、「どなたか・・・ご家族とか親しいお友だちで、お客様のカード・ナンバーを知りうる立場の人が、クレジットを利用されているということはありませんか」
「ありませんッ。絶対にありえません!」
 思わず声が大きくなった。が、相手はひるまず、
「お客様のアカウントを使用された人が、どうしてお客様のクレジットカード情報を手に入れられたのかは分かりませんけど、それは弊社のミスではありません。弊社からの大量の情報漏洩があった場合はべつですが、個々のカード情報の管理は、申し訳ございませんが、お客様のほうでやっていただくのが原則です」
 わしの頭に血がのぼった。そもそもわしの頭は、案内板や標識などがよく整備されているらしく、血がのぼりやすい。出す声がさらに高くなり、言うことも荒っぽくなった。
「それはないんじゃないの! 少なくともアマゾンを舞台にして、カードの不正使用が行われているんだよ。それなのにわが社は関係ないといって放り出すの? アマゾンってそういう会社?」
「・・・・」
「名前は忘れたが、こういうカードの不正使用で被害が出たばあい、舞台となった会社が弁償すると聞いたことがあるよ。世界最大の通販会社で、ベゾスかベソカクか知らないけど、そういう名前の会社のトップは、世界長者番付で長年1位を続けているというじゃないの。そんな大会社が、顧客の災難には知らん顔するわけ?」
 係員はしばらく沈黙していてから、「すみません、しばらくお待ちください」といってまた引っ込んだ。手もみメロディーがふたたびあとを引き継いだ。
 
 このときもずい分長く待たされた。手もみは何度もくり返された。

 アマゾンの最終対応を要約するとこうだった。
 ①アマゾンから当該クレジット会社に連絡をとったところ、今からでも請求の取り消しができるので、取り消しを行った。その過程で生じる経費はアマゾンが負担する。
 但しクレジット会社ではすでにその分の事務処理をして、明細をお客様(わし)に送ったあとなので、次回の請求分で差し引く。
 ②当方のカード情報がどこでどうして洩れたかは、本件のような個々のケースではアマゾンには調べる方法や権限がない。ただ、わしのカード情報を不正使用したと思われるプライム会員には、当方(わし)からクレームが来ている旨をアマゾンから伝える。
 ③カード情報がすでに他人に漏れている可能性があるので、今後の不正を防ぐためにも、カードナンバーの変更を勧める。

 ほぼ納得のいく回答だったので、いちおう了解して電話を切った。

 こういう話は、これまで他人のごととして何度か耳にしたことはあったが、自分にまで実際に起きてみると、改めて情報社会の怖さを思い知った。

 その怖さは、こうした事件に対処すべき法整備が、プライバシー権利との絡みでいかにも詰めが甘く、日本ではまだまだ未成熟であるから起きるという印象をもった。

 ・・・であるがゆえに、個々人のデジタル・データの管理は、当人が心して慎重かつ厳重に行わなければならないと反省した。
 自分の財産は、結局、自分が守る以外にないのだと。
 
 ・・・ていってあんた、守る財産があったっけ?
 

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