長生き埋め時代
コロナで重症化するのは、圧倒的に老人が多いらしい。
で、ワクチンの接種でも、医療従事者の次に老人が優先されるそうだ。
優先されるというと、なにやら老人が大切にされているように聞こえるが、じっさいは違う。ほんとはメンドー臭がられている。誰も表だっては言いマセンけどね。たとえ上司が無能でも、酒でも入らなければあからさまに悪口は言わないのと同じ。
老人が嫌がられる理由は明快だ。
生産性がない。
いや、ないどころか足を引っぱる。
早い話、つい最近も、五輪・パラリンピック組織委員会のトップに居すわっていて、組織委の仕事の邪魔したのがいたでしょ。
つい油断して実体がポロリとこぼれ落ち、あちこちから叩かれて、辞任に追い込まれたあの老人だ。
この爺さんがいい例である。
女性蔑視問題に限らず、時代の感覚からずれた考え方や行動で周辺を引っ掻きまわす。それがわしら老人だ。
その上にデス、あっちが痛い、こっちが痺れる、足が立たない、アレも立たない・・・などというのは当人の個人的事情だからまあいいとしても、ひとりで食事ができない、トイレの用が足せない・・・などとなると、当人だけの問題ではなくなる。
こんなのに周辺をうろうろされていては、メンドー臭くないわけがない。・・・ではないか。たとえ肉親でもね。
・・・と、まだ老人になっていない連中が内心ではひそかに思っているだろうことは、わしのような半ボケ老人でも分かる。
しかし、生きものが生きていれば老いるのは宿命だから仕方がない。7万円の高級ステーキや海鮮料理を“ごっつぁん”するから、何とかわが老化を食い止めてくれないか、と総務省に頼みこんでもダメ。
それにしても、昔は老人がこのように悪しざまに扱われることはなかった。
それは落語を聞けば分かる。
江戸時代に作られた噺のなかでは、年をとってアレコレ支障が出てきても、「年食うのも芸のうち」とか言ってかばってくれる。
言葉が出てこなくて話に詰まっても、「あの間(マ)に味があるんだよねぇ」などと言って支えてくれる。
どうして昨今はこうも年寄りに対する扱いが悪くなったのか。
江戸時代と現代では何が違うのか、と考えてみた。
人間の肉体部分(脳も含める)は、わずか数百年では変わることはないから、変わったのは環境のほうだろう。
中でもいちばん大きいのは、やはり科学文明の進歩だ。それはトンボにだって分かる。轟音をたてて音速超えで空を飛ぶ同類は江戸時代にはいなかった。
その科学文明の進歩のうちでも、とりわけ老人に不利に働くものがある。
いろいろあって、以前当ブログでも扱ったことがある(参照 →『破り捨てられるラブレター』)が、今回は別の視点から見てみる。
科学文明の進歩のうちでも、この問題には大きくかかわっているのは医学の進歩だ、とわしは見る。
つまり医学の急速に発達によって、人間の命が引き延ばされた。それがこの問題の根幹だ。
その結果、高齢者がやたら増え、必然的に上述したようなメンドい老人も増えた。ちなみに日本の平均寿命は、常に世界のトップクラス。(2016年度は男女平均で第1位)。
数がこれほど多くなければ、苦労の多い人間を長くやった先輩としてレスペクトもされ、丁重に扱われることもありえたかもしれない。
しかし人生百年時代とか言って、あっちにもこっちにも90歳超えの老人がウニョウニョいたのでは、いいかげん鼻につく。
そのうえ時代にずれた言動で邪魔をし、足を引っぱり、かてて加えて上や下の世話までさせられたのでは、たまったものじゃない。・・・ではないか。わしにもよく分かる。
コロナのお通りでは、国や社会は国民に外出自粛を要請したが、そのうち老人限定で “長生き自粛” を求めるようになるかもしれない。・・・とわしは見る。
表立って法制化まではしなくても、監視・口コミ・同調圧力などを利用して、裏からじわじわと “自粛” を強いてくるような気がする。
ジョークを言っているのではない。実際、かつてこれとほぼ同じことが日本でも外国でも行われていた。深沢七郎の名作『楢山節考』で知られる「姨捨風習」。
個人的意見だが、この “長生き自粛” は、100%当人の自由意思に基づくかぎり、実はわしはそう悪いことではないと思う。いわば “選択的死に方別制度” 。
具体的に言えば「安楽死」の社会的公認。
これしか、この老人問題を解決する方法はないとわしはニラむ。むろん難しい問題もあるけどね。
しかし「安楽死」は日本ではまだ認められていない。関われば犯罪だ。
“生き埋め” という言葉がある。
生きたまま土の中に埋められる。
現代の老人はいわば一種の「生き埋め状態」だと言えないか。
つまり、”長生き埋め” 。
しかしコレ、あんまり美しいひびきではないねぇ。
「長生きしてうめーぇ」
ホントはこう言いたいのだが・・・。
当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。